成年後見制度って何?
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力を欠く人を保護するための制度です。具体的には成年後見人を選任し、その人が本人(判断能力を欠く人)に変わって 契約などの各種手続きを行うことになります。
「母が最近物忘れが酷くなったわ」「最近夫の言動が怪しいのよね……」
このように認知症が疑われる時は成年後見を検討すべきです。ただ、成年後見に費用がかかることをお伝えすると、「うちは一緒に住んでるから、そんな生活困らないしええわ」とおっしゃる方もいます。もちろん、無理に利用はしなくていいとは思いますが、放っておくと後々面倒になるときもあります。
例えば相続発生時です。私が以前ある方の相続手続きを進めていたところ、相続人のお一人に認知症の方がいらっしゃいました。本来であればそのまま遺産分割協議を進めてもらい、登記まで行うはずでした。しかし、相続人の方に認知症の方がいらっしゃると遺産分割協議ができないのです。これは判断力が欠けている人は意思を示すことが難しい=協議できないという理由です。よってこの場合、その方に成年後見人をつけて、その後遺産分割協議を行うという流れになりました。結局成年後見の申し立て手続きのために相続手続きが2ヶ月ほど遅れることになってしまいました。
成年後見手続は申し立てから選任まで、1〜4ヶ月かかります。上記のように、相続や契約など重要な法律手続きを控えているときには成年後見手続きの利用を予め検討しておいた方がよいでしょう。
どうやって申し立てるの?
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。ただ、本人が申立書を書くことはできないため、親族が手続きを行うことになります。4親等以内の親族であれば申し立てができますので、ご安心ください。
申立書の書式は家庭裁判所のHPにありますので、そこからダウンロードしてください。書式の他には下記のような書類が必要になりますので、ご準備ください。
- 申立人の戸籍謄本
- 本人の戸籍謄本
- 本人の戸籍の附票
- 本人の登記事項証明書
- 本人の診断書
- 成年後見人候補者の各種書類
- 申立事情説明書
上記は一例です。事情によって変わってくる場合もありますので、実際に申し立てる場合は家庭裁判所か司法書士等にお尋ねください。
成年後見人は誰が選ばれるの?
家庭裁判所が選任するので、誰が選ばれると断言することはできません。ただ、私の所感だと親族後見人と専門職後見人(弁護士や司法書士など)を一人ずつ選任する場合が多いです。この場合は、親族後見人が身の回りのお世話を担当し、専門職後見人が契約等の手続きを担当することになります。
また、申立書に成年後見人の候補者を記入することもできます。ただ、この希望が必ず通るとは限らないのでご注意ください。
成年後見っていつまで続くの?
原則として本人の状況が改善するか、本人がお亡くなりになるまで成年後見は終わりません。辞任や解任などの制度は用意されていますが、いずれも正当事由がなければ認められないのでレアケースではあります。
「遺産分割協議が終わったからもう後見人は必要ないよ」と途中で終わらせることはできないので、その点はお気をつけください。
まとめ
- 成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力を欠く人を保護するための制度
- 成年後見を開始するためには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要がある
- 成年後見は、本人の状況が改善するか、本人がお亡くなりになるまで終わらない